เข้าสู่ระบบ久しぶりに、私は酔っていた。 飲んだのは三百五十の缶チューハイ二本だ。 たいしたアルコールじゃないんだけどな。 久しぶりのアルコールだからだろうか。いい感じに酔っていると感じていた。 なんだかふわふわしているけれど、意識はちゃんとある。 でも勢いで口は軽くなって、距離も近くなってしまいそうで。 事実、ぴったりと身体をつける勢いで、私と東雲さんは並んで座っているし、それを疑問に思っていない自分がいる。 卵焼きと生ハムの後、東雲さんはクラッカーを用意してくれた。 その上には小さなチーズがのっている。 「こんなおしゃれなおつまみ、初めてかも」 なんて笑いながら言って、私はクラッカーを口に運ぶ。 おいしいなぁ。 思わずにんまりと笑っていると、東雲さんがゆったりとした声で言った。「涼花さ……有藤さんがが楽しそうで俺も嬉しいです」 慌てたように名前から名字に訂正されて私は思わず吹き出した。「あはは、なんですかー? それ。いいですよー、名前で呼んでいただいてもー」 言いながら私は東雲さんの背中をポンポン、と叩く。 こんなの酔っているからできる事よね。 シラフだったら触れることすらしなかっただろう。 それくらい今、私は気が大きくなっている。 笑う私に対して、東雲さんがグラス片手にこちらへと顔を向ける。 ほんのりと紅く染まった頬。 愛おしげに細められる瞳。 その顔を見て私は思わず胸がドキリ、と高鳴ったような気がして慌てて顔を反らしてお酒をぐい、と飲んだ。「涼花さん、そうしたら俺の事も名前で呼んでもらえますか?」 甘く、耳に絡みつくような声で言われ、私はさらにお酒を流し込む。 どうしたんだろう、東雲さん。 なんだか変だよね、やっぱり。 私はお酒の缶を両手で握りしめ、おずおずと顔を上げて隣を見た。 すると、思ったよりも近くに東雲さんの顔があって、私は思わず目を泳がせてしまう。「な、な、な……名前?」 裏返った声で言うと、東雲さんはうっとりとした顔で微笑み頷いた。「えぇ。俺の名前」 催促するように、すっと手が伸びてきて私の頬にそっと触れる。 そんな行為に顔がぼん、と熱くなるのを感じながら私は東雲さんの名前を思い出す。 契約書にあったからよく覚えている。しかもちょっと珍しい名前だったから。「……や……|八尋《や
その日の夜。 子供たちが寝静まった頃、私は東雲さんのリビングで動画を見ながらお酒を飲んでいた。 ここにきてお酒を飲むのは初めてだ。 それくらい私は今日、イラっとしていた。 昼に自分でケーキを作って、動画見て自分のご機嫌をとったものの、イラッと感はおさまりきっていない。 そんな私の隣には、お茶を飲む東雲さんがタブレットを片手になにか作業をしていた。 私は梅酒が入ったグラスをテーブルに置いて、大きく息をつく。「会いにいくなと言われているはずなのに、なんで会いに来るのかしら?」 呆れたように私が言うと、東雲さんが苦笑する。「そうですね。そういう話、ネットで見かけますけど実在するのにある種の感動を覚えるというか」 東雲さんも呆れた声で言い、タブレットから顔を上げて私の方を見た。「確かに私も感動しましたけれど。そういうのは現実にいらないです」 言いながら私はぐい、とチューハイを飲んだ。 彼女の顔を思い出したらイライラが増してきた。「だいたいおかしくないですか? 浮気したのは郁人の方なのに。なんで私がこんな不快な思いしなくちゃいけないの?」「そうですね。まさか探偵雇ってこちらを探しだすなんて。なかなか行動力がある」「ねー。彼女、お金はあるみたいだからそれくらいやるんでしょうけど。だからって私が浮気したみたいなの酷いと思う!」 そして私はまたチューハイを飲んだ。 飲んでいたら何か食べたくなってきた。 夜に食べるの、よくないけど。 何かあったかな。 思わずキッチンの方へと目を向けると、東雲さんがタブレットを置いて立ち上がった。「あ、何か食べますか? 持ってきますよ」「え? でも」 チューハイが入った缶をおいて立ち上がろうとする私を、東雲さんが片手で制する。 そしてニコッと笑って言った。「もうお仕事の時間ではないですから、俺が用意しますよ。手の込んだものは作れませんが」「え、作ってくださるんですか?」 驚く私に、東雲さんは頷いて答えた。「はい、すぐできますから待っていてください」 と言い、彼はキッチンのほうへと向かっていった。 何を作るんだろう。 気になるけれど、見ないようにする。 玉子を割る音と、かき混ぜる音。そして、何かを焼く音が響く。 どうしよう、チューハイもうすぐ飲み終わっちゃう。せっかくつくってくれてい
十一月に入ると一段と寒さが増してくる。 子供たちを送った後、私は寒空を見上げた。「もう十一月かぁ」 九月に家を追い出されて、もうすぐ二ヶ月になろうとしている。 あれ以来郁人は接触してこない。連絡はどうだろう。前のスマホは充電しているけれどメッセージの確認は一切していないから様子はわからなかった。 まだ示談には至っていないらしく、早く終わってくれないだろうか、という気持ちでいっぱいだった。 街路樹の木々はとうに葉の色を変えていて、冷たい風に乗り葉を散らしている。 マンションの前に着いたときだった。 背後から声がした。「すみませーん、有藤涼花さん、ですよね?」 耳慣れない、若い女性の声だ。 なんで私の、離婚後の名前、知っているの? 驚いてばっと振り返ると、そこには見覚えのある女性が立っていた。 「あ……」 柳瀬美波、さん。 郁人の浮気相手で大学一年生のインフルエンサー。 彼女は身体にぴったりとした茶色のパンツに、ニットを着ている。 化粧は抑え目だから学校に行く前とかだろうか。 荷物がたくさんであろうリュックを背負っていて、お嬢様には見えない。 彼女は驚く私の前に、ニコニコと笑顔を張り付けて近づいてきて言った。「探偵さんに頼んで探していただいたんですよー」 あぁ、そうか、私が探偵を使ったように、彼女も探偵を使ったのか。 私の居場所を探すのは簡単よね。 保育園に張り込みして、あとをつければいいだけだから。 顔は郁人のスマホにいくらでも保存されているだろうし。 何しに来たんだろう。 私は思わず半歩後ろに下がって彼女をじっと睨みつけてしまう。 彼女はにたぁ、と笑って、手に持っていた封筒から何かを出しながら言った。「有藤さん、男性と暮らしていらっしゃるんですよね?」 そして封筒から出したものを私に見せつけてくる。 それは写真だった。 私と東雲さんがふたりの瞬間を切り取ったものだ。 場所はこの間でかけた動物園だった。 子供たちが一緒にいたはずなのに、いない瞬間だけを撮ったんだろうな。 思わず顔が歪む。「……あの、なんなんですか?」「何って、お話をしに来たんですよー。私、今、困ってるんです」 そう、本当に困ったような表情をして、柳瀬美波は写真をしまいながら言った。 困ってるって、自業自得じゃないの。
昼食を終えたあと、私たちは動物園に併設された小さな遊園地エリアへと移動した。 レトロなメリーゴーラウンドや観覧車に子供たちは大はしゃぎで、さくらちゃんと俊太は終始ニコニコと笑い声を上げて乗っていた。 その姿を見ていると、本当に家族みたいだなと思ってしまう。 いや、東雲さんと家族になりたいってわけじゃないけれど。 自分の中に芽生えている感情に戸惑いを感じながら、私は子供たちと遊園地を楽しんだ。 そろそろ帰ろうか、というころ、俊太がもじもじとしだす。「俊太君、トイレ行きたい?」 私が言うよりも早く、そう声をかけたのは東雲さんだった。 すると俊太は大きく頷く。「おしっこいきたい」「俺と一緒に行こうか」 と言い、東雲さんは俊太に手を伸ばす。 すると俊太はうん、と言って、その手を握った。「え? あ、あのいいんですか?」 戸惑いながら私は東雲さんと俊太の顔を交互に見る。 俊太はそれどころじゃないみたいで、早く、と言い出す。 その様子を見て東雲さんはこちらに笑顔を向けて言った。「はい、大丈夫ですよ。男同士ですし、俺の方がいいでしょう。申し訳ないですが、さくらをお願いします」「す、すみません、ありがとうございます」 恐縮しつつ頭を下げると、東雲さんは俊太の手をひきトイレへと向かっていった。 残された私はさくらちゃんに声をかける。「そろそろ帰るけれど、さくらちゃんはトイレ、大丈夫?」「うん! 私アイス食べたい!」 そう言って、さくらちゃんは近くにあるキッチンカーを指差す。 それは、粒つぶのアイスやクレープを売っているキッチンカーだった。 チョコレートやミックスフルーツ、といったアイスが売られているらしい。 それを聞いて私は頷き、さくらちゃんに手を伸ばす。「わかった。じゃあアイス食べて待っていようか」「うん!」 私たちはそのキッチンカーの列に並ぶ。 ちょうどおやつの時間だからちょっとお客さん、多かった。 徐々に列が短くなり、私たちの番が近くなってきたときだった。 買い物を終えたお客さんの女性と目が合う。 その人はさくらちゃんと同じくらいの女の子を連れていた。 あれ、あのお母さん、どこかで見たような……?「あ、さくらちゃん!」 そう声を上げたのは女の子のほうだった。「レナちゃんだー」 そう嬉しそうにさくら
公園の広場には、たくさんのお客さんたちが集まって、シートをひろげてご飯を食べている。 キッチンカーも出ていてとても賑わっていた。 東雲さんがあいている場所を見つけて、シートを広げる。 大きなシートは厚手で星柄が描かれている。 そのシートを見て、さくらちゃんが目を輝かせて靴を脱いだ。「おっきー!」「今日のために大きいのを買ったんだよ」 そう東雲さんが胸を張る。 あぁ、だからネットショッピングの荷物がきていたのね。 今日、お弁当を詰めている保冷バッグも新しく買ったから使ってくれと、東雲さんが用意してくれたものだ。 私たちは靴を脱ぎ、シートに座る。 そして私は保冷バッグからお弁当を取り出した。「はい、これ、おにぎり。ごま塩のおにぎりと、鮭のおにぎり。それと……」 言いながら私はお弁当のタッパーを開けていく。 唐揚げや卵焼きにはキャラクターのピックをさした。 うさぎに切ったリンゴをみたさくらちゃんが、身を乗り出してタッパーを覗き込む。「うわぁ! すごい! かわいい!」「リクエストのウサギのリンゴだよー」 そう私が答えるとさくらちゃんはばっと顔を上げて、ニコッと笑い、「ありがとう!」 と、元気な声を出した。 感謝されるとすごく幸せな気持ちになる。 郁人との件や、浮気を疑われていることでこのところ気が重かった。 でも、俊太やさくらちゃんがこうして喜んだり笑顔になると嬉しくて、その時は郁人とのことを忘れられて幸せだった。 というか、日常がこれなもんね。 郁人との争いは日常の延長上の話なのに、どこか遠い話題に思える。 弁護士さんに一任しているから、だろうけれど。 あれから郁人からの接触はない。 郁人も弁護士に依頼したみたいだし、裁判は嫌みたいで示談する方向で調整しているらしい。 でも、例の彼女の事で揉めているらしく、時間がかかりそうだ。 お金は、郁人のご両親の遺産があるはずだから払うの、大変じゃないはずだ。 でも彼女とは離れたくないのね。 そう思うと複雑な気持ちになる。 彼女とどうなろうと知ったことではないので、さっさとお金だけ払って解決してほしい、という思いもあるけれど、彼女にも痛い目を見てほしい、と思う自分もいる。 それが何とも複雑で気持ちが悪かった。 だから今日は忘れて楽しまないとね。 東雲さんがウエ
十月末。 約束のお出かけの日がやってきた。 朝早く起きて、私はお弁当の用意をする。 おにぎりに唐揚げ、卵焼きにコロッケ、冷凍のお惣菜。うさぎの形に切ったりんごを用意して。 お弁当箱は捨てられる容器を用意した。 準備出来たおにぎりやお弁当を見て思わず笑みがこぼれてしまう。 遠足かぁ。楽しみだな。 前の結婚の時、家族で出かけることなんとめったになかった。 お弁当を作るの、こんなに楽しいって思ったのは久しぶりかもしれない。 「ほら、さくら、髪の毛縛ろう」 そんな声が、リビングの方から響く。「ヤだ。俊太君ママがいいー」 そんな声が続き、そんなさくらちゃんをたしなめる声が聞こえた。「俊太君ママは今、お弁当作ってくれているんだから」「ヤだ、パパへたっぴなんだもん」 その声を聞きながら、私は用意したお弁当を保冷バッグに詰めて、保冷剤を放り込む。 子供たちの水筒にお茶を入れたあと、私はさくらちゃんに声をかけた。「準備出来たから、私が髪の毛縛るね」 するとさくらちゃんはぱっとこちらを見て、笑顔で大きく頷いた。「うん!」 その頃、すっかり準備を終えた俊太は、テレビで動画を見ている。 よかった、俊太が大人しくしてくれていて。 東雲さんは苦笑して、小さく頭を下げて、「お願いします」 と言った。 「大丈夫ですよ。さくらちゃん、今日はどんな髪型にしようか」 と言い、私は髪の毛のアレンジ表を取り出した。 毎日どの髪型にするのか、というのを決めるのは大変なので、調べて用意した表だ。 ツインテールみたいな一般的な髪型の他、さくらちゃんが好きなアニメキャラなどの髪型を載せている。 十種類ほど載せているから毎日さくらちゃんは目を輝かせて、髪型を決めていた。「今日はおでかけだしー、これがいい!」 そう言って指し示したのはツインテールを三つ編みにした髪型だった。 それを見て、私はさくらちゃんの髪の毛を縛るゴムを用意する。 お花の飾りがついた、ヘアゴムだ。 ぱぱっと髪の毛を縛って三つ編みにすると、さくらちゃんは満足げにこちらを見て、「ありがとう!」 と、声を上げた。 さくらちゃんが嬉しいと私も嬉しい。「ほら俊太、そろそろ行くよ」 そう声をかけると俊太は頷いて立ち上がる。 俊太の手を握ると、東雲さんの声がした。 「それじ







